綾辻さんのデビュー作にして代表作「十角館の殺人」です。
僕が綾辻さんを最初に読んだのは「眼球奇譚」なんですが、独特の世界観にガッツリとはまりまして 笑
デビュー作からガンガン読んだのを覚えています。
もう30年ほど前になりますね。
当時すでに「黒猫館の殺人」まで出版されていたので、続けざまに読みまくりました。
面白かったですねー 「眼球奇譚」とはまた違ったアプローチなんですが、楽しみました!
今回「十角館の殺人」をあらためて読んでやっぱりいいなー と思ったので個人的な感想と共ご紹介。
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粗あらすじと個人的な感想
1.叙述トリックと伏線
「十角館の殺人」で最も有名なのが あの「インパクトがMAXのひと言」ですよね。
読んでいない人でも知っているほどなので、いまではネタバレでもなんでもないのかもだけど 笑
僕が読んだ当時は今みたいにSNSがあるわけでもググる習慣や媒体自体がほぼ無かったこともあってうおーーーっ そう来たか!! ってなったもんです。
そう考えると なんでも先にわかってしまう現代の情報速度や伝達範囲の広さは良いようなそうでもないような感じですね
ともあれ叙述トリックですが、注目されるのが最後のひと言とはいえ、それまでに張られた伏線は細かくてたくさん。
ミステリ研究会のメンバーが過去の著名なミステリ作家の名をあだ名にしているとこからトリックが始まってますよね。
伏線で言うといっちばん最初に海に流した瓶詰の手紙がいっちばん最後に回収されるあたり 大好きです♪
他にも叙述トリックに行きつく前の伏線がたくさんあるので、まるでスルメのように味の出てくる書籍です
2.物語のながれ
物語は大きく分けて「十角館」と言われる無人島(角島)にある建物で起こる連続殺人と、「本土」での過去事件の調査で構成されています。
無人島(角島)に行くのは某大学のミステリ研究会のメンバー7人。
本土で調査するのは元ミステリ研究会の江南と現メンバーの守須、そして偶然的に参加となった島田の3人。
江南と島田は「館シリーズ」の中心人物になっていきます。
島と本土が1日ごとに交互に書かれているので連動して考えがちですが、実際の絡みはありません。
初見の時、僕は完全に混ざりましたが 笑
舞台となる「十角館」と過去に起きた四重殺人の現場「青屋敷」は世界的に著名な建築家・中村青司が設計したもので両方(角島)に建てられています。「青屋敷」は過去に起きた四重殺人の際に焼失しており、いまでは角島に住む人もいなく「十角館」だけが残された状態です。
この「十角館」をミステリ研究会メンバーの叔父さんが買い取った事によって、研究会が研修会を行う名目で島を訪れます。
そんな大きな事件のあった場所にミステリ研究会が興味がないわけがないですよね。
期間は1週間。その間本土との連絡はなく、メンバーだけで角島・十角館・青屋敷の焼け跡をじっくり楽しもうとするわけです。
ところが島では、まるでメンバー以外の人物がいるかのような出来事が起こり、仲間が次々と死んでいきます。
疑心暗鬼の中犯人を捜そうとす推理をするメンバー達、それと連動するように動く本土での調査隊が明かす真実。
結末は驚く方向に向かっていきます。
3.過去の事件「青屋敷の四重殺人」
角島に研究会のメンバーが行く半年前と1年前には伏線的な事件が起こっています。
それが「青屋敷の四重殺人」と「ミステリ研究会の死亡事故」。
この2つの事件は連続殺人事件の犯人と動機に大きくかかわる事件としての位置づけになるのですが、しっかりミスリードもしてくれます。 笑
当時角島の「青屋敷」には建築家の中村青司・和枝夫妻と使用人夫妻の四人が暮らしていたのですが、この四人がまとめて殺されたうえに屋敷は焼失する という事件が起こっています。
犯人とされているのは同じ時期に島に来ていたのに事件後行方不明となっている通いの庭師・吉川とされています。
動機は財産と中村夫人への横恋慕 ベタですが、わかりやすいですね。
ここでの気になる伏線は 中村夫人は左手首を切りおとされ殺されている事と、その手首がいまだ発見されていない事
そして4人が殺された時間にタイムラグがある事ですね。
事件後半年経過した今でも四重殺人の謎と言われている点です。
4.過去の事件「ミステリ研究会 中村千織の死亡事故」
この中村千織の死亡事故が2つの意味ですべての始まりになります。
1つは犯人の動機付けの意味、もう1つは本土調査のきっかけとなる事です。
無人島にミステリ研究会が行っている同時期に死亡事故に関わりのある人たちに手紙が送られてきます。
送り主は中村青司。 そう、あの角島の建築家です。
死んだはずの人間からの手紙には「お前たちが殺した千織は、私の娘だった」とあります。
これに触発されて本土にて「青屋敷の四重殺人」の調査をするようになった江南ですが、実はそれも巧妙に仕組まれたものでした。
ここでの伏線は事故から1年以上経過した「今になって手紙が送られてきたのはなぜなのか」という点です。
手紙から読み取れる送り主の意図を想定し、江南は中村千織の父親、青司の弟・紅次郎を訪ねます。
この先はそこで知り合った男「島田」と共に行動していくのですが、ここで彼らが導き出した手紙の真意が「角島」の四重殺人を再考察しろ というもの。
この点は少し強引に思えました。 もし考察しろというなら、事故だと思っていた中村千織の事を調べなおす方が自然です。
だって、手紙には千織は事故死ではなくて殺されたって書いてありますからね。
この事故を先に調べずに「角島の四重殺人」に話がいってしまうのは「ん?」ってずっと思いながら読んでました。 笑
結果的にはこの事故についても色んな事が明らかになるのですけどね。 やはり順番が逆だよな と個人的には思ってます。
面白いのはこの本土で一連の調査をしている側と「十角館」で殺人事件に巻き込まれるメンバーには事実上の関連性がない事で、お互いに何も知らずに動いているんですよね。
読んでいると混同してしまいがちですが自然にリンクされている感じになっているから混ざっちゃう 僕だけなのかな 笑
ともあれ中村千織の事故を追ううちに「青屋敷の4重殺人」の真相に行き当たります。
ホント細かいつながりが読んでいて楽しすぎる!!
5.現在の事件「十角館の連続殺人」
メインとなる殺人事件は、「角島」という無人島に建てられた「十角館」で起こります。
犠牲となるのは研修に行った某大学のミステリ研究会のメンバー7人。
7人いるメンバーの性質も話の展開上大事でしたし、会話や行動の端々に伏線的な匂わせがあるので要注意です。
ミステリ研究会だけあって、メンバーが結構細かい違いにひっかりを覚える描写があるんですよね。
どんどんメンバー数が減っていく中、偶然的なミスリードがあったり、出来そうなキャラなのに残念な結果になる人がいたりと読みどころ満載。
いま読み直すと時代を感じる事も多々あるけれど、そんな事気にならないくらい引き込まれる。
僕は後になるまで犯人にまったく気がつかなかったのだけど、再読した時はあちこちにあるその「匂わせ」の細かさにやられまくりでした。
ただ、無人島だけあって情報が少なすぎるから研究会のメンバーには解決しようがないのだけどね。
現場になっているからその場で考察していくしかないっていう それも自分がいつ狙われるかわからない
これって実際あったら 精神的プレッシャー半端ないよね。
今みたいにスマホでググれる時代じゃないから なおさらなにもできない。
そして最も有名なフレーズは 最初衝撃でした。
元からドンくさいのか僕は全く予想していなかったので「あああぁぁぁぁ」って 笑
お前かー ってなりますよね
そのフレーズもそうですが、終わりがやはり僕は好きですね。
全部が終わったその後に 島田がきっと気づいたであろう事と犯人が出会った偶然の審判。
審判は自分の手で って感じ くぅーーってなる
6.個人的な感想
何度読んでも楽しめる
それが一番しっくりくるかも
僕はあまりじっくりと読むタイプではないのでバババッと読んでしまいます。
一番最初にこの本を読んだ時もそうだったので、犯人はすっかり違う人物で思いこんでました。
読み終わった後、もう一度じっくり読んでみたくなったので振り返りながら読むと
今回記事にしたように色々と細かく仕込まれていている事にあらためて驚きました。
最初からじっくり読むべきだった…。
同じ時間軸でありながら接点がない本土と島の出来事。
それなのに
どうなる どうなる と読み切ってしまいますよ。
問題があるとすると
これ、いちど読みはじめるとシリーズ全部そのまま読みに行ってしまう事
今回も「暗黒館」まで読み走って 「暗黒館」で力尽きました 笑
「十角館の殺人」と言えば叙述トリックのありかたから実写化はできない と言われましたが今回ドラマ作成されましたね。
観たけど、5シリースになっているから変に話がはしょられていないし、なんなら中村千織の心理状態が書籍よりも詳細に描かれていたし、各キャラクターもはまっていたので想像してた何倍も楽しめました!
そちらもおすすめです!