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人間模様

「悪い夏」(染井為人)の伏線考察

悪い夏

今回は染井為人さんのデビュー作でもある「悪い夏」を読んだのでおおまかな流れと伏線などについて解説します。
今年(2025年)3月に北村匠海さん主演で映画が公開されますね、そちらも楽しみです!

「悪い夏」ですが、前評判どおりに「クズとワルしか出てこない」 
コンセプトが「近くで見ると悲劇は遠くで見ると喜劇」という事で話の展開は悲惨だけれど、思わずニヤっとしてしまうところもちらほら。

登場人物もさほど多くはないものの、みなさんキャラクターがめっちゃ立っててわかりやすい

これね 面白い!!

粗あらすじと個人的な感想

1.物語のながれ

26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して――。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす! 第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。         引用:「悪い夏」染井為人 [角川文庫] - KADOKAWA

ほんの2ヶ月ほどの間の物語なので展開の早さとスピード感で、あっという間に読み終わりました
僕は染井為人さんの書籍「正体」「滅茶苦茶」に続いて3冊目と少ないのですが、どれも社会の裏面が身近に描かれて自分の隣で起こってもおかしくないって思えるものばかり。今回も読みながら 誰にでも起こりうる事だよなあ と思わせる展開でした。

2.クズ公務員・闇落ち公務員

1.佐々木 守
 市役所の生活福祉課・保護担当課に勤め、生活保護受給者(ケース)の不正受給の訪問確認も担当している(ケースワーカー)。
同僚に宮田有子・先輩に7つ年上の高野洋司がいる。

2.宮田有子
 佐々木の同僚。はたからみると真っ正直で堅物な雰囲気の持ち主で、「我慢」の職場と名高い過酷な生活福祉課へ自ら異動志願したらしい。
そんな宮田の事を佐々木は変わり者だと思っている。 が 実は伏線
他にも言動や行動が結構伏線的なことが多かったりする

3.高野洋司
 佐々木の先輩。仕事はサボるし、自分が嫌なケースを佐々木に押し付けようとしたりする。 あげくに自分の担当する不正受給者のシングルマザーに対して受給打ち切りをしない見返りに肉体関係と金銭を要求しだす。 まさに小悪党 笑
結構早い段階でドーンと不幸の底に落ちていきます


3人そろっての絡みはほぼないのですが、ある日第三者からの告発によって小悪党高野の不正に疑いを抱いた宮田有子は佐々木を引きずり込んで不正を暴くべく行動を起こします。これがすべての始まり
佐々木は一見クズやワルとは一番遠くにいるタイプですが、この行動がきっかけになって闇落ちしていく事になります

闇落ちするとけっこうなクズになる 笑
最後には高野のいる不幸の底あたりまで深く落ちていきます

ちょっとかわいそうではあるんですが、そこまで闇落ちするか! ってくらいの落ち方は清々しいくらい 笑

絶対は自分はああなりたくないけど… 

あまりにまっすぐ落下していくのでこれはホント悲劇なのに喜劇っぽい 
これって表現が上手なところですよね。

3.クズ+ワル

1.山田吉男
 佐々木 守の担当するケース男性で不正受給者
仕事にあぶれた時期に金本龍也(ヤクザ)に出会い、生活保護の不正受給をするようになる。
その後は金本龍也の手足となってちょっとした仕事をするようになりどんどん金本地獄にはまって抜けられなくなっていく

2.林野愛美
 4歳の女の子をもつ半ネグレクトなシングルマザー
知人・莉華からの入れ知恵で生活保護を受けるようになる。莉華のねじ込みでセクキャバの手伝いをしていた時に生活保護担当の高野と偶然会ってしまい受給資格をたてに肉体関係と金銭を要求されるように。
そのことを莉華を通して金本龍也に相談したことでさらに不幸になっていく
一瞬幸せになるにかもって展開になるのだけど やっぱりこの人もクズってことなのかなー 

3.莉華
 林野愛美の知人で金本龍也の女。わがままで自分勝手なクズ 笑 
あまり深く考えず行動してかき回した結果、いろんな人間が不幸になっていく事になる。
役に立っているわけではないが、物語上は結構キーパーソン

4.金本龍也
 もともとは東京にいたヤクザだったが兄貴分を殺してしまい、都落ちして千葉県の小さな組の預かりになる。
自信家で東京に戻ろうと画策しているが実のところホントに出来のいいやくざなのかは疑わしい感じがする(個人的感想ね)。

4.悪い夏 の伏線たち

ほんの少し物事のタイミングがずれていたら、ただ暑いだけで悪い夏にはならなかっただろうなあ って思う。
金本の描いた悪だくみが途中で頓挫し、そこから山田が独走したことで話はややこしくなるのだけど、端々にあるイベント的な出来事が伏線的になってるのは読んでて面白かった

宮田有子の動きと言動でもしかして?って思ってたら最後にやらかしてくれたのでカオスになる 笑
金本の描いた絵を壊したのも宮田の動きによるものなんだけど、そのせいで高野洋司は途中でほぼいなくなってしまったし。

高野はいなくなって何をされているかってのも大事な伏線
これは最初読んだとき完全にスルーしてたので、後半のドタバタ喜劇状態の時に これかー! って嬉しくなったりした 笑

悪い奴らのたくらみのせいで、巻き込まれた人はそれぞれにとって良くないって意味の「悪い夏」になっていくのだけど、
結局一番悪い夏になったのは佐々木なのかなー

落ちていく様は実際やられたら自分でも気づかないうちに落ちるなって感じで、結構リアルに怖い。

5.個人的な感想

ひとつ間違えると誰にでも起こりうる不幸な話なんだけど、主人公佐々木は同情してしまうくらい純朴で悲しくなる
どう考えてもヤクザやドラッグには無関係な人生を送っていけたはずなのに、とばっちりで人生が真逆になってしまう様は ふと自分が巻き込まれたら と考えると恐ろしくなるリアルさがあったと思う。

進むにしたがって不幸な結末が予想できて「かわいそうに」ってなってくるのだけど、佐々木の吹っ切れ加減が結構爽快でわかりやすいくらいにイカレてしまった! 最後はある意味無双状態に 笑

喜劇とまで言わないけれど、悲劇な状態がここまで重なる?笑 ってくらい最後はドタバしタしながら伏線回収もありでどんどん進みました。
宮田有子と莉華は違うタイプの余計な事するキャラクターだった

登場人物どうしの関りがすこしずつあるので、読んでいて関連性が分かりやすかったのだけど、佐々木の担当するケースさんのひとりはもしかしたら登場しなくても良かったかも とか思ったりして 笑
あ、でも不正受給の横行がこんな風にあるのかなっていう事例としてはあったほうがいいのかな

とてもまっとうな人生を歩んでいた佐々木は、他人に人生を狂わされたのだけど
イカレてしまった彼もまた他人の人生を狂わせてしまう要因になってしまうところは
自分が思ってもいなかったところで人の人生に関与することって あるよなーと ちょっと考えさせられましたね。

もうすぐ映画が公開されるけど、どんなふうに仕上がってくるのか気になっているので観てこようと思います

まとめ

今回は染井為人さんの「悪い夏」ネタバレしないように伏線考察をしてみました。
本のボリューム自体はそれほど多くはないですしとても分かりやすい感じの書き方だなと思うので、
少しアウトローな感じが好きな方や悲劇を遠くから眺めてみたい方は読んでみて!!

映画化おめでとう!

2025年3月20日より、北村匠海さん主演で映画が公開されましたね。
さっそく見てきましたよ♪

今回も「正体」に時のようにエンディングが変わっています。

こちらでチェックしてみて!


 


 











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